軽そうな癖に妙に猫背な身体をふわりと浮かせてタンクの上に乗った
admin | 2011年3月30日
いつものことだ。
そう言い聞かせて、あいつの隣に座る。
「何してるの」
「そんなに俺のこと気になるの」
「そう、気になる」
「そ、」
そう言ってあいつは、軽そうな癖に妙に猫背な身体をふわりと浮かせてタンクの上に乗った。花痴
下から見上げていたら、なんだか眠くなってしまったのであたしはもう授業に取り合うのをやめることにする。
透明な硝子瓶のように透けた空が眩しい。
「気になるんだ」
「そう、それだけ」
「俺はそんなに素直じゃないのにな」
「それでいいよ、」
「お前らしくないな、妥協するなんて」
「あたしだって、そんなに妥協しないよ」
「何を」
「色恋沙汰に関して」
「んふふ、馬鹿みたい」
「いいの、あたしは」
そんなことはどうでもいいんだ。あたしは今ゆるやかでたのしければいいんだ。
精一杯壁に手をついて背伸びし、私に微笑みかけたのは一匹の子猫だった。全身が真っ黒で、目が大きくて、しかし手のひらに十分乗ってしまうその体長。まだ生まれてそんなに日が経っていない。彼は内側の壁に爪を立てて二本足で立ち上がり、必死で私に前足を伸ばしていた。私は驚いて、思わず彼を抱き上げ、小さな脇の下に手を入れて正面から見つめた。みーみー、と高い声で鳴きながら四本の足をぎこちなく動かしている。開いた口は私の小指も入るかどうかわからないほど小さく、歯があるのかないのか見えない。目だけがまっすぐに私を見つめていて、純粋で、人間の子供のようだった。
人間と同じ目をしている。私はただそう思った。
子猫は私の手のひらの上に乗って、手相を辿るようにくるくると歩き回り、手首、二の腕を歩いて背中まで冒険していった。落ちそうになったので慌てて片手で彼を掴み、ため息をついた。捨て猫か。拾ってくださいという置手紙はないが、ちょっと買い物に行くために生まれたばかりの飼い猫をダンボールに入れて公園に放置するとは思えない。
私は子猫の目を見つめた。彼も見つめ返す。異種族同士のコミュニケーションは共通母語がないぶん難しい。私は彼を見つめて、ふと今日の授業での出来事を思い出した。
何故人を殺してはいけないのか分かりますか、と先生は黒板をチョークで叩きながら振り向きざま質問した。四十人がひしめく教室の中で、誰もが「家族が悲しむから」「逮捕されるから」「一生を棒に振るから」と答えている中、私は手を上げて先生に名前を呼んでもらった。性欲剤